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放送局の裏の裏。



【マスコミ就職活動】夢への一歩を踏み出す

それから8時間後、俺はとある寿司屋にいた。
就活仲間でもある高校の同級生らと3人で晩飯を食っていたのだ。
しかもそれは回ってない寿司。
学生にはめっちゃくちゃ贅沢だけど、
俺の残念会ということで!と強硬に主張した。

合否はどちらでも電話連絡が来るということだったが、
あきらめかけていた俺は、
携帯の電波の届きにくい店であることも気にしなかった。

もちろん話のネタは就活で、
グチ、グチ、みみっちいジマン、グチ、グチ、みみっちいジマンの繰り返し。
一人は推薦で某精密機器メーカーに決まっていて、
俺を含めた残る二人がメインでグチっていた。

俺は今日の最終面接の手ごたえの悪さをグチり、
飲めない酒を無理矢理飲んで、

「やっぱり夢は夢で終わるもんなのか~!」

などと青臭いことを言ってみたりしていた。
それを二人が「まあまあ」となだめる様は、
まるでイケテナイサラリーマンのよう。
なんと恥ずかしい姿だろう。

そして俺は勢い余って、
とんでもないことを口にしてしまった。

「どーせ落ちるんだから、
もし内定出たらここ全部俺のおごり!」

一瞬盛り上がる二人。

「でもどーせダメなんでしょ?」

と次の瞬間には
現実に戻って寿司を食らう。
俺も負けずに寿司を食らう。
食らう食らう食らう。
飲む飲む飲む。

1時間後にはすっかり腹はふくれ、
飲めない酒を飲んだ俺は頭痛と睡魔に襲われていた。

そのとき、携帯が鳴った。
トドメの電話か~と思いつつ通話ボタンを押す。

「もしボし~こんヴァ、プツッ、ツーツーツー」

切れたぁ~。
おいおい、切れたよ。
焦る俺。
店の外に走り出す。
ふらついて傘立てを倒す。
立てて、傘を戻そうとして店員さんに助けられる。
もう一度走り出す。
電波を求めてうろちょろする。
寿司屋と隣の店の間の細い路地に落ち着く。
かすかに残る期待を捨てきれないダメな俺。

そのとき、もう一度携帯が鳴った。

「もしもし、切れたんだけど大丈夫?」

人事の人に不安がられる。
謝って次を促す。

「今日は最終面接に来ていただいてありがとうございました。
面接までに長い時間待たせてごめんなさいね~。」

なぜか引き伸ばす人事。
絶対この人Sっ気あるよ。

「厳正なる面接の結果…」

うぉっ、来た、運命の瞬間!
どっち?やっぱダメ?

「おめでとう、内定です!」

や、や、やたー!
やったよー!やったよとーちゃん!

狭く暗い路地でガッツポーズをしようとして、
思わず壁にコブシをぶつける。
でも、すりむいたことにも気づかないほど興奮し、
2度の受験でも、○度の告白でも得られなかったほど
大きな喜びの波が押し寄せた。
ずっと思い続けて良かった、
自分なりの試行錯誤を重ねてきて良かった…。
これまでの失敗や苦い思い出も、
すべてここに繋がるための道筋のように思えてきて、
繁華街の片隅でひとり声を上げた。

この後、
寿司屋のレジ前で「うっ」と唸ったのは言うまでもない。
回る寿司にしておけば良かった、と思ったあの日だった。
by drive-2-iko | 2005-12-24 00:26 | 就職活動
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社会人7年目。放送局に勤務する日常をつづります。

by drive-2-iko
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