夢にまで見た〝放送局の内定〟をゲットした後に待っていたのは、
内定辞退という予想外に苦しい作業だった。
内定をもらうときにはあんなにうれしくて、
辞退なんて数多いほど幸せだ、
なんて思ってたんだけど…。
いくつかの内定辞退は電話で済んだ。
そういうところはたいてい大きな会社で、
『内定の歩留まり』を先読みして内定を出しているところ。
人事の人にいきさつを話して、
行くことに決めた会社を告げるだけで話はスムーズに進む。
そのなかのひとつに、あるサプライメーカーがあった。
ここの皆さんとは雰囲気が合うというんだろうか、
面接のときから「この会社は俺に向いてる」という実感があって、
人事の方ともとてもウマが合った。
マスコミがダメだったらここに行きたいと思っていた。
だからこの会社に辞退の電話をするときは、
とても辛かった。
人事部長さんもとても親身に話を聞いてくれて、
俺の夢を優先させることを許してくれた。
最後に、
「キミには内定者旅行の盛り上げ役をやってもらおうと期待してたんだけど、
とても残念だよ」
と言われたときには、
受話器を握りながら涙が出そうになった。
実は親戚がその会社の専務取締役をしていた。
迷惑かけるのは大嫌いだから、
親族一同にも受けてることは内緒、
人事にも親戚が専務であることは内緒、
だったんだけど、そうしておいてホントに良かった。
出世するにはこの会社に入るのがイチバンだったんだろうけど。
そしていくつかの会社は、
電話だけでは済まされず、
事情聴取に呼び出された。
噂に聞くような「牛丼をかけられた」ということはなかったけど、
胸座を掴まれたことは2度あった。
そのうちの1回は、
例の某大手広告代理店。
拘束旅行をなんとか乗り切ったあの会社だ。