放送局の裏の裏。



夏の夜の寒い経験(後編)

ここまでのあらすじ。
ある夜、会社にリスナーさんが訪ねてきた。
それは番組宛にスイカを送ってくれた方だった。
美味しかったかどうか聞かれたが、
わざわざ届いたかどうかを確認しに来たわけではないようだ。
では彼は、いったいなんの目的でやってきたのか。
迫りくる恐怖と絶望の淵で、若手ラジオマンが見たものとは?

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佐藤(仮名)「それで~なにも来ないんですけど・・・」
俺「ハイっ?」
佐藤(仮名)「だ・か・ら、なにも送られて来ないんですよ。」

「だ・か・ら」の好きな人だな・・・
ってオイっ、キ、キ、キ、きたよーっ!
「送られてこない」ってなんなんだ!?
もしかして謝礼を要求されているのか、俺。

俺「あのぉ~こちらからは何もお送りしてませんが・・・」

恐る恐る言ってみる。

佐藤(仮名)「えっ、どーいうことですか?何もくれ・・・ガチャガチャドカッ」

なんか受話器がわちゃわちゃになっている。
先方の身に何かあったようだ。
さらに恐怖心が募る。
そのとき受話器から声がした。

女「ちょっとあーた(怒)!こっちがスイカ送ってるのに、
  お礼も何もないなんてどういうことなの!?
  普通人からモノをもらったらお礼を言って、お返しをするのが基本でしょ!」
俺「ハ、ハ、ハイ、ところでどちらさ・・・」
女「あーたのところの番組はグッズも送ってこないの!?
  失礼でしょっ(怒怒怒)」

押しかけてきていきなり怒鳴り散らすのとどっちが失礼なんだよ、
っていうかあんた誰?
と思いながらも、
おば様と思しき人の勢いに圧倒されて、
次の言葉が出てこない。
かろうじて、搾り出すように吐いた言葉はこれだった。

俺「じ、じゃ、どうすれば・・・」

あまりの恐ろしさに、LIFEカードCMのオダギリジョーばりに弱気な俺。
そして、その言葉を聞いて急激に落ち着く女。

女「私、あーたのところのA(出演者)さんが好きなの。
  Aさんのグッズなにかちょーだいよ。」

キッパリ断るというカード。
素直に応じるというカード。
俺の前に出された二つのカードは、
すっげー美人に言い寄られたかのように、
不思議と後者がとても大きく、魅力的に見えた。

俺「は、はあ。わかりました・・・」
女「じゃ、早く持ってきて」

もはや謎の女性の下僕と化した俺は、
我が番組の出演者4名がプリントされたグッズを詰め合わせ、
脱兎のごとく警備室に向かった。

なぜか謝る俺、ふんぞり返る女性=佐藤(仮名)嫁と判明。
それをなだめる佐藤(仮名)ダンナ。
どうやら、嫁の番組への思い入れを知った佐藤(仮名)ダンナが、
なにかグッズくれないかなーとスイカを送り、
それを知った嫁が「なんかくれるのー」?と舞い上がったことが原因のよう。
嫁思いではあるが、嫁を操縦しきれない佐藤(仮名)ダンナ。
何とかしてくれ。

この後、延々2時間もAさんへの思いを聴かされ続けた俺は、
警備員の「かわいそうに」という視線に少しだけ癒されつつ、
こんな夜に残業をしてしまった自分を恨むのであった。

ってか、その熱意とプレゼントはありがたいことですけれども、
厚かましすぎやしないですかい?
申し訳ないけれど、すべてにお礼はできません!
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by drive-2-iko | 2005-07-29 00:53 | 日々の仕事
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社会人7年目。放送局に勤務する日常をつづります。
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