放送局総合職3社目。
そこはまず書類審査があり、
そこを通過した人が面接に呼ばれる。
なんとか書類が通過したようで、
ある晴れた寒い日に面接が行われた。
行ってみると、想像以上に狭く汚い部屋。
大丈夫かここの会社は・・・と思ってしまうほどだ。
受付を済ませて、
ちょっと斜めに傾いたパイプいすに腰掛け、
名前が呼ばれるのを待つ。
ふと前を見ると、若い兄ちゃんがしゃべっていた。
今後のこととかを話していたので人事の人かと思ったんだけど、
実は彼、若手のアナウンサーで、
受験者を和ます前説のために呼ばれたのだとか。
前説という割にはすべり気味で、
人事の人からのツッコミで辛うじてもっていたことを覚えている。
ただアナの一生懸命さと人の良さ、
その場の雰囲気の良さは見ていて心地よく、
個人的にはとても気に入った。
そしてそれが、
俺の今後にもけっこうな影響を及ぼしてくれたのだった。
15分ほど待つと、名前を呼ばれた。
案内されていった場所はスタジオ。
スタジオの中にブースがいくつか作られていて、
同時にいくつかの面接が行われていた。
面接官は20代後半のカッコイイ兄ちゃんと、
30代後半のヒゲずらのおっちゃんだった。
面接自体は今まで受けてきた会社と変わらず、
いままで3年間なにしてたのとか、
エントリーシートに書いたある写真のことなどについて、
10分ほどしゃべった。
たいした話もせず大丈夫か?と思ったが、
手ごたえは悪くなかった。
そして最後に、
「なにか質問はありますか?」と聞かれた。
特になにも考えていなくて、
思わずさっきの前説若手アナのことを聞いた。
「○○アナと人事の方の前説があったんですけど、
この会社はあんな感じの人ばっかりなんですか?」
『あんな感じの人』という言葉には、
肯定の気持ちも否定の気持ちもないように、
フラットな言い方で伝えた、つもりだ。
あっちがどういう捉え方をするか、
それを見て対応しようと思ったのだ。
すると面接官は顔はニコニコ、目は笑わず返してきた。
「そうだよ」
俺の見え透いたプランは一撃で破られた。
こうなればもう、
本当に感じたことを言うしかない。
素直に、言葉を選ばず言った。
「あの雰囲気めっちゃ好きです。
この会社に入りたくなりました。」
面接官はまたも顔だけ笑ったまま、
1次面接は終了した。