最終面接まで来て、
そんな落とし穴にハマるとは思ってもみなかった。
面接室の重厚な扉が開き、
そこに一歩踏み入れたとき、
俺の脚が何かに掴まれた、気がした。
なんと廊下の大理石から突然変化したフカフカジュータンに、
足を引っ掛けてしまったのだ。
ジュータン深すぎ!!と思う間もなく、
おっとっとっと…転びかけながら入室する様はまるでコント。
「出オチか!」とツッコんでくれることを期待したけど、
お堅い役員がそんなノリなわけもなく、
空気はピーンと張り詰めたまま。
スベった芸人以上のバツの悪さをなんとか振り払おうと、
強引に出した挨拶の大きい声がムナシク響く。
ヤベッ、印象悪いかも…。
アゲアゲで来たはずのテンションが、
ヒューン↓というSEが聞こえるほど下がったのを感じた。
そんな状況の俺には2つの選択肢があった。
ひとつ、テンションを再び上げてガンガンいく。
ふたつ、メンドクサイのでそのままいく。
当然、もちろん、あったりまえに後者でしょー。
自分の気持ちに素直にしゃべると決めてきたわけだし、
気分屋な俺には前者は絶対ムリ。
いまのダウンした気持ちを無理に上げようとしても、
不自然になるのは目に見えてるし。
そう思ってしゃべりはじめたんだけど、
会長・社長・役員のじーちゃん連中はまーったくもってやる気ナシ。
会話どころか質問すら出てこない。
これはもしかして、俺に興味がないのか?
もしかして、俺にだけなにも聞くことないのか?
こっちから何を話し始めていいかもわからず、
ただただ冷や汗を流す。
そのうち、沈黙に耐えかねたのか、
付き添っていた人事担当者が口を開いた。
「エントリーシートにあるけど、ラジオドラマ作ってたんだって?」
そのシーンは今でも目に焼きついている。