そのシーンは今でも目に焼きついている。
人事の人がラジオドラマと言ったその瞬間、
今まで眠っていた(ように見えた)その場でイチバンの長老の目が、
カーッと見開かれた。
まるで大魔神が鬼の形相に変わるように、
死んでいた長老の顔が一気に生気を取り戻し、
ポックリいってしまわないかと心配するくらいの大きな声を発した。
「ラジオドラマ!!どんなの作ってたんですかー!!!!」
あまりの迫力に0.5秒くらい沈黙…。
でもその後、6mmテープの話とか、
SEの作り方の話とか、
ラジオドラマの話だけで面接の制限時間になってしまった。
おかげでこの長老とはすっかり意気投合。
でも、ほかの面接官たちは相変わらず、
まったくもって俺に興味なし。
社長なんか苦々しい顔をしたまま、
とうとう最後まで口を開かなかった。
ハッキリ言って、今までの面接の中でサイコー級に手ごたえナシ。
長老との会話だって、なんのアピールにもならない趣味の話だし…。
俺は2度目の最終落ちを覚悟した。